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〜まちづくりのキーワードは「自分ごと」〜「まじめに、おもしろい地域づくり」 

バンナ・デザイン代表(前佐川町長)
堀見 和道 先生

令和4年2月初旬、高知県内を「2023年度前期のNHK連続テレビ小説が佐川町出身の植物学者、牧野富太郎博士をモデルにした「らんまん」に決定!」というニュースが駆け巡った。

この朝ドラ実現は、前佐川町長の堀見さんのホームランだろう。

佐川町リーダーとしての8年間、大事にしていたことは何か?についてじっくりと語ってくれた。(今回はオンライン配信での授業となりました。)

目次

はじめに

今日は主に佐川町長時代に実践してきたまちづくりの話をさせていただきます。この8年間、チーム佐川は何か面白いこと楽しいことが大事じゃないかと言う思いで取り組んできました。

まずこの写真は天才植物学者である佐川町出身の牧野富太郎博士。

彼を主人公として、NHKの朝ドラ2023年前期の連続テレビ小説「らんまん」が制作されることが決まりました。これは3年以上を掛けて、多くの皆さんのご協力をいただいて実現することができました。

みんな自分事で、地域づくりまちづくりにかかわっていただけたらいいなと言う思いでお話しをさせていただきます。

生まれてから社会人まで

ガキ大将

私は男3人兄弟の3男で生まれました。保育園の時はなぜか花屋さんをやりたいと言っていたそうです。小学校の時代は近所の柳瀬川で溺れて死にそうになったりしたこともありました。また何でも勝たないと気が済まない、やんちゃでジャイアンみたいな小学生でした。

数学、ふられん暴将軍

高知学芸中高時代、私の中での数学は、ゲーム感覚で次々に難問にチャレンジしていくロールプレイングゲームの様な存在でした。国語や社会の時間にも数学をやっていたので、先生からは諦められていて「授業の邪魔だけはするなよ」って言われていました。(笑)

数学に一生懸命打ち込んだことで、課題を解決するときに何か仮説を立てて答を導いていくプロセス、答えは必ず見つかるはずだというと言う思いが、自分の生き方、町長時代の仕事や経営コンサルタントの仕事をしているときにも生かされたんじゃないかと思います。

また同級生には「ふられん暴将軍」と言われたことを覚えています。たくさん女の子に告白をしては全てフラれていました。高校を卒業するまでは、自分を中心に地球が回り得るんじゃないかな。って勘違いする様な自分勝手な性格だったので、自分をよく知っている人にはことごとくフラれていました。

もて期、仲間

これが大学の建築学科に入って新しい環境で過ごす様になってくると、少しもてる様になってきたかなって思う4年間でした。あと、麻雀はよほど好きでメンツを集めに大学に行く様なものでした。

そんな学生時代でしたけど友達付き合いはしっかりしました。大学時代の仲間が今の自分の生き方に大きく影響を与えてくれています。大学に入って勉強したとしたというよりは素敵な仲間に出会えたと言うのが自分にとっての財産かなって思います。

新日本製鐵建築事業部、事業仕分け人

就職では、面白い先輩がいたのと、東京大学の建築学科を出て新日鉄に行く人はなかなかいないので希少価値があって面白がってもらえるんじゃないかと思って新日鉄建築事業部に入りました。

実は、小中高大学とずっと一緒だった年子の兄も新日鉄に入社していましたので、会社くらいは別にしてくれよって怒られましたが(笑)。

新日鉄は5年で辞めて静岡に引っ越してから16年間、株式会社堀見総合研究所という建築設計と経営コンサルタントの仕事をやっていました。このころ、政府では事業仕分けと言うことをやっていましたが、これはもともとシンクタンクであるNPO「構想日本」(現在は一般社団法人)が提言した事業で、構想日本の代表の加藤さんと長いお付き合いがありましたので、静岡県でも行政にかかわる仕事をやらせていただいていました。

2013年6月に高知に帰って来ることになった際に、高知新聞の方が私の経験を調べてくださって取材のオファーをいただきました。両親にとっては親孝行になるんじゃ無いかなと思って取材を受けたのですが、「事業仕分け人」って呼んでいただいたのは後にも先にも高知新聞さんだけです。

この1年後に佐川町長選挙があったのですが、立候補のきっかけになったのがこのときの記事で、この記事を見た佐川町の人が「佐川に帰ってきてくれないか」と連絡をいただきました。最初は断ったのですが、半年後に佐川に帰ってきました。

町長の仕事は楽しいです。

自分はソフトボールを長くやっていましたので(高校時代はインターハイで全国優勝)、チームメートの能力や性格はみんな違っているけれど、全員で一つのゴールを目指して同じ方向を向いて進んでいくチーム力って言うのはすごく大事だな、って思っていました。

選挙にあたっては「「みんなでつくろうチーム佐川」って言葉を掲げて、みんなで素敵なまち、幸せのまちをつくって行きましょうという思いをリーフレットに込めました。またこのとき「新しい佐川町の総合計画をみんなで策定する」と書いています。

町として進むべき方向の地図、羅針盤をみんなで作ると言うことがすごく大事だなと、これはなんとしてもやりたいなと言う思いで選挙を戦いました。8年間はあっという間でしたが、本当に町長の仕事って楽しいんです。

小さな佐川くらいの町だと、すごく手触り感があるんです。町が小さいがゆえに、みんなで喜びが分かち合える、みんなの喜怒哀楽を実感できるというところが仕事の醍醐味かもしれないです。

牧野博士の朝ドラかが決まったとき、私は町長ではなかったですけれど、いろいろな人が連絡をくれました。コロナ感染症がなければおそらく大宴会だったでしょうね。

私としては、あまりアクセルを踏んで仕事を進めた感じはしないんです。多くの人に協力していただいて、それぞれに主役がいてやれたことです。13,500人の人がその気になって、自分ごとで町のことに関わってくれるといろんな事が変化として起こってくると言うところがまちづくりの醍醐味じゃないかと思います。

みんなで進めるための工夫。

選挙公約にしていました「みんなで総合計画を作る」ことを、町長になって2年間でやりました。

これは、行政が計画を立ててやる事業ではなくて、住民の皆さんが「こういう地域づくりだったら、この事業なら参加しても良いな」と思ってもらえるのではないかという25個のプロジェクトを拾い上げて、個人でもチームでも関わってもらって楽しんでもらえるときっといい町になるだろうと思い、全戸に配布しました。

①佐川町の総合計画はみんなで作る、②そして町の皆さんの幸福度がちゃんと上がっているのかを測定できるようにする、③町民の皆さんが楽しく参加できる様にする。この3つが特徴になっています。

さて、チームで「コト」を起こすってなるとやっぱりルールが必要になるときがあります。一人で出来るまちづくりももちろんあるのですが、チームで取り組まなければ出来ないこともあります。そのためには、ルールというと重たいですけれど、みんなの納得、共感、合意をして取り組んでいくことが大事になります。

でも、田舎になればなるほど、この合意形成の部分を丁寧にしていくってコトが出来ていないところがあります。声の大きい人が「もうこれで」と言えばそれで決まるようなところがある。何か重たいものが町にのしかかっているのなら、一回それを吹き飛ばしたい。いろんな人がアイデアを出しあいながらまちづくりが進んでいくと言うことをみんなでしていきたい。

そう思って、佐川町では行政職員と住民が一緒になって、こういう合意形成のためのファシリテーション研修をずっとやり続けました。その結果、8年間でそこそこ幸せなまちづくりを前に進めることが出来たのでは無いかと思います。

自分ごとの地域づくり

これからいくつか地域づくりの事例の話をさせていただきます。

家庭ゴミをどうするかっていうのはまちづくりに直結します。地球全体で持続可能な地域づくりをするためにはこの問題から目をそらすことは出来ません。ゴミ焼却場施設の延命措置もあと15年くらいまでです。

これからはできるだけ燃やすゴミを減らして出来れば全てリサイクルに回していくことが大事になります。全ての住民の皆さんが自分事で、自分の子供達に将来に関わるコトだと思ってどうするかが問われている問題だと考えています。

みんなで作る総合計画の1番目のプロジェクトである「まちまるごと植物園」。牧野博士の故郷として、植物を愛して育てることで思いやりの心を育んでいくまちづくりをしましょうという取組です。

この写真の中の素敵な男性は、イギリス人でガーデニングデザイナーのポールスミザーさんという方ですが、周りの女性の皆さんもスミザーさんの様な方が来ると目をキラキラとさせて、楽しそうですね。やっぱり楽しいことは誰かに言われなくても自分事として主体的に活動できる。そういうことがまちづくりに繋がることはすごく良いことですね。

牧野公園リニューアル事業という、自生の山野草の種を集めて種まきをして、芽が出たものを公園に植えるという活動があるんですが、この活動があったので朝ドラが実現できたと思っています。地道な、真面目な、面白い活動が花開いたもので、牧野博士も天国で喜んでくれているんじゃないかなと思います。

仁淀ブルー体験博。これは別府で始まった温泉博覧会が長良川おんぱくという形で全国に拡がったのを仁淀川流域でも体験博をやろうと実施しました。やはり地域の宝を掘り起こして磨き上げをする。そういう人がまちづくりに関わって持続的な取組にしていく、しっかり稼いで生業にしてもらうと言う取組はとてもいいなと思います。

アートによる地域づくり。この写真は佐川町にある、最近はあまり子供も遊んでくれていない、長い滑り台なんですが、地域おこし協力隊でアーティストの方に来ていただいて、地域の子供達に関わってもらって、ピンポン球に絵を描いて夜に光らせたら、本当に多くの人が来てくれました。

巨大紙相撲大会。段ボールで作るんですが、子供から大人までものすごく盛り上がります。こんな風に、一人でも出来る地域づくりですけど、チームでやると喜びも分かち合えますし笑顔が拡がる取組になれば地域にも波及していきます。

まちづくりの原点はやはり笑顔があふれる住民の皆さんの関わりが全ての根源だと思います。(堀見先生)

後記メモ

「地域のコト」を「鶴の一声」で決めるのなら、時間もかからないし考えなくても済むから楽で良い。でも、そうやって誰かに依存してしまうと、なぜか不満が残ってしまう。

一方、「地域のコト」をみんなで決めることは面倒くさいし時間もかかる。でも、そうやって丁寧に手間暇を掛けたぶんだけ、みんなで喜びを分かち合える。

「それが本来の民主主義でしょ!」堀見さんはそう言いたかったんじゃないかと思った。(豊後)

この記事を書いた「こうち仁淀ブルー熱中塾」メンバー

豊後 彰彦
豊後 彰彦

会議の設計施工管理屋を自称する高知県庁の土木技術者。マイボートで釣りをしながら、友だちといじりいじられる時間が至福です。

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