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釣りのある生活(くらし)

釣りキャスター
村越 正海 先生

あの村越正海さんである。
釣りをする人で村越さんのお名前を知らない人はいないだろう。実は僕もこの年にしてちょっと舞い上がっている。
しかし、逆にいつもテレビで拝見しているせいか、昔からよく知っている釣り友のような気もするなぁ。む、ヤバい!これって芸能人に馴れ馴れしく声をかける大阪のおばちゃんの心境かも。(笑)

目次
 僕の仕事は「職業釣り師」
 業界裏話
 恩師の教え
 TV番組「ザ・フィッシング」の制作

目次

僕の仕事は「職業釣り師」


初めて高知に来たのは35年くらい前で、一夜だけの日程で四万十川にアカメを釣りに来た。その時にはアカメを針にかけることはできたけど、糸を切られて釣りあげることができなかった。

でもたった一晩でアカメがかかったものだから、これは意外に簡単だなぁと思ってしまった。その後10年間は全く釣れなかったなぁ。(笑)
高知に来るときには、アユ釣り、マブナ・タナゴ釣り、ハイカラ釣り(船を潮の流れに同調させるように櫓を漕ぎながら、活きエビ+短い竹竿(通称ギリ竿)+糸は手巻きでクロダイなどを狙う)などをやっている。あとは足摺岬の周りでヒラスズキ釣りも。
ハイカラ釣りは文化として次世代に伝えるべきだね。黒笹教頭に教えてもらった浦戸湾でのハイカラ釣りがあまりに面白くて、この前は自分でギリ竿を作って高知まで飛行機で持ってきた。でも、6本のうち4本が折れていたのはとっても残念だった。
僕の仕事は「職業釣り師」です。釣った魚を売るのではなく、「釣って書く」「釣ってしゃべる」「釣って演じる」のが仕事。大事にしていることは、絶対にヤラセをしないことです。

業界裏話

昔の釣り番組ではヤラセもあったみたい。いつ何が釣れるかわからないから、番組制作のためにはほどほどで手を打っていたのだろう。「そろそろ魚屋行きますか?」「あの時の石鯛は○○千円だったね」みたいな話もあったらしい。(笑)


制作者が釣りのことを知らない場合はとんでもない釣り企画になるときがある。
ある番組から出演依頼が来た。内容を聞いてみると「海上釣り堀の利用料金は一人あたり1万5千円と高い。じゃあプロが釣ったら必ず元が取れるのか、検証してみよう!」と言うことだった。

当然、丁寧にお断りした。当たり前だよね、その日その日でいろいろと状況は違うんだから。(笑)

また別の番組では、「百均で売っているモノだけで真鯛が釣れるか?」というタイラバ(船からシリコンラバーでできた疑似餌を落として真鯛などを狙う釣り方)の企画が来た。これには、つい乗ってしまった。

タイラバ仕掛けや竿、糸も百均にあるもので何とかなるだろうと考えたからだ。でも次にはこう聞かれた。


ディレクター:「船はどうするんですか?」
僕:「はい?」
ディレクター:「ですから、百均に売っているものでどうやって沖に出るんですか?」
こんなわけのわからない話もある。(笑)

恩師の教え

僕は就職をしたことがない。大学生の時から釣りを仕事にしていて、当時は文章1字1円、写真1枚100円だった。釣りでお金を得た感激で就職活動をやめてフリーになった。

「村越君の書いていることには誠意が感じられるね。」

これは、ある雑誌の編集長(恩師でもある)から言ってもらった言葉だ。彼は僕に2つのことを教えてくれた。
「鉛筆で書くのをやめなさい。」 
「鉛筆で書いた文字は消せる。その意識があると頭の中で整理できないまま書き始めてしまう。すると文面を練ることをしなくなる。だから、しっかりと頭の中で考えてからボールペンで書きなさい。」と言われた。


「君はそのコーヒーカップについて何枚書けるかな?」
ある喫茶店でこう問われた。僕はなんとなく「20~30枚ですかね」と答えたら、「村越君、テキト―に言ったね。それではアマチュアだよ。プロならこのカップを360度、上下左右からじっくりとみてから答えなさい」と言われた。
この2つは、今もずっと大切にしている。

TV番組「ザ・フィッシング」の制作

1983年10月から放送が始まったザ・フィッシングという釣り番組に、僕は1984年7月から出演している。今では自分で釣っているけど、最初の方は釣り人から話をうまく引き出すレポーター役を務めた。

今でも相手がしゃべりたいであろうことを聞くこと、相手のしゃべりたいことをつぶさないようにすることを意識している。
また番組が盛り上がるように「演じる」ことも重要だ。
例えば、「お、かかった!これは○○の引きだって言いたいけど、間違えたら恥ずかしいな。」と黙ってしまう釣り人がいる。そういう不安な気持ちはわかるけど、TVでは無言になるのはダメ。
 俳優のつるの剛士さんと組んだ「村つるコンビ」も次で11回目の放送だ。彼はプロの俳優なので、普段は上手にコメントしているんだけれど、竿を持った途端に釣り師に変身して無言になっちゃう。それはダメだよって彼に言うんだけど「村越さん、無理っス!」だってさ(笑)。
 番組では釣り用語の監修にも力を入れている。国語辞典の釣り用語の監修もやらせてもらっているので、番組のナレーターが使う言葉はシビアにチェックしている。

例えば釣りでは本命以外の魚が釣れた時に「なんだ、外道か」って言うけど、外道の反対語って知っていますか?答えは「内道」。内道とは仏教のこと。

そもそも外道っていう言葉は仏教以外の教えのことを言う仏教用語だ。言葉を扱う商売をするなら、その意味まで深く理解してから使うことが大事だと思います。

(編集後記)

村越さんは、昨日は作家の夢枕獏さんと黒笹教頭の3人で、仁淀川沿いの用水路でタナゴを釣っていたとのこと。その時の写真を見せてもらったけど、(大変失礼ながら)おっさん3人がキャッキャと楽しそうに笑っていた。

また、ユーチューブには村越さんが高知県内の小さな小川(溝と言ってもいいくらい)で嬉々として小さなマブナを釣っている動画がアップされている。なぜこの場所で?と村越さんに聞いてみると、ご自分でグーグルアースを使ってようやく探し当てたポイントだったそうだ。
本当に「釣りはイイよねぇ!」と言う感じが伝わってきて、こっちまで嬉しくなった。
黒笹教頭は講演の冒頭に村越さんを「国内唯一のプロの釣り師」と紹介された。確かに釣りの話が中心だったけれど、講演の本質は「仕事とは?」と言う問いかけであったし、「プロフェッショナル=お金をいただける仕事」の姿とは何かを教えてもらった気がした。

この記事を書いた「こうち仁淀ブルー熱中塾」メンバー

豊後 彰彦
豊後 彰彦

会議の設計施工管理屋を自称する高知県庁の土木技術者。マイボートで釣りをしながら、友だちといじりいじられる時間が至福です。

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