南紀白浜エアポート 代表取締役社長
岡田 信一郎
はじめに
みなさんこんにちは。和歌山から参りました岡田でございます。先月も高知に来ていました笑。我々の空港は小さな地方空港。民営化をしてから色々な取り組みをしている。今日は我々の活動をご紹介させていただけたらと思います。
元々は土木の技術者だった。土木、経営コンサル、投資などを経験してきた。さまざまな経験を経て今は空港をやっている。白浜に投資をしてそこで責任者をやっている。
空港民営化と白浜の挑戦
民主党の時代に空港の民営化が始まった。私は、当時1兆2000億円の借金を抱えていた関西空港の再生を担う仕事をしていた。空港を売り込むセールスマン。世界一大きな商品を扱うセールスマン。2年間で地球14周分の距離を飛んだ。成田に追いつけ追い越せで仕事をした。成田空港との差別化を図った。その結果、営業益で成田を超えた。
続いて、南紀白浜空港の仕事に取り組んだ。当時赤字毎年3億円。白浜をなんとかできたら他も救える、ということで仕事を始めた。とにかく低い認知度が課題だった。東京から1時間、日本三古湯、熊野の山々。温暖な気候。魅力があるのに知られていなかった。
白浜。海路時代は交易の拠点だった。当時最強と謳われた熊野水軍の拠点でもあった。神武天皇の建国伝説もある。人の気質は高知に似ていて、生き物も南方系。
白浜空港。とにかく小さい。空港の格は客数で決まる。羽田は頂点。白浜はダメダメだった。ここをなんとかしようということで事業を開始。「空港型地方創生」をコンセプトに地域活性化に取り組んでいる。空港だけでなく、地域全体の活性化を目指して仕事をしている。去年はコロナ禍ながらも過去最高の利用者数を記録した。ビジネス関係の人がたくさん利用してくれるようになった。
コロナ対応。これからは安心、ということがキーワードになる。三密センサーや、和歌山丸ごと抗ウイルスコーティング大作戦の展開。ホテル、飲食店、地域30ヶ所以上で実施した。この対策が功を奏して、白浜への旅行予約人数が増加。旅行先魅力度でも一位になった。今あるものに気づく。もともとあるものをブラッシュアップしていく。こうした地域活性化が花ひらいたのだと思う。
高知の楽しみ方
私は人と自然と触れ合うため高知にきている。釣りして、飯食って、たたき食って、酒を酌み交わす。これが楽しい。そういう観光がこれからはいいんじゃないかな。毎回遊びに来るたびに友達が増えていく。
空港型地方創生
白浜町人口2万人。和歌山全体で91万人。人口減少が止まらない。所得も低い。こんなに人がきているのにまちが潤っていない。なんとかしなければ。
関西からのお客さんが多い。国土強靭化で高速道路が伸びて便利になった結果、日帰りで来られるので宿泊しない人が多い。地域にお金が落ちにくい状況に。
解決すべき課題。まずは認知度。和歌山はもとより、空港は全然知られていなかった。続いてプランの課題。移動が困難なのでモデルコースが作りづらい。顎足枕が中途半端。食、移動、宿泊の質が十分ではなかった。言語対応、キャッシュレス化もイマイチ。
でも、和歌山すごいんです。世界的にも有名。一番有名なのは熊野古道。日本の信仰の原点。那智の滝。川湯温泉。白良浜。パンダ。7頭もいるし待たずに見られる。マグロ。勝浦の競りは観光資源。
でも、行政担当区域ごとに観光PRをしているのであまりインパクトがない。地域全体で、総合力で勝負しないと意味がない。だから空港会社が観光庁の地域連携DMOに登録し、
広域PRできるようにしていた。行政の下支えも大きい。まずはワーケーションの推進。ホテルのリノベーションの支援、新規進出支援、サイクリング王国わかやまの取り組み、民間ロケットの打ち上げ場も。年間20発打ち上げられる。ほぼ花火大会。そして、白浜空港の民営化。
白浜空港、滑走路が短い。2000m(高知は2500m)。JAL便しかなかった。1日3回しか飛行機が来ない。逆に言うと、全てのお客様に会える。空港で会って話をすれば打ち合わせに行く必要がない。空港のコミュニティスペース化。空港が人と情報の流れを掌握できる地域拠点に。
なぜ白浜なのか
関空をやった後。日本の地方管理空港は全て赤字だった。地方財政に負担をかけていた。まずは赤字のトップバッターの白浜をやろうと。白浜から、「空港型地方創生」で地方に夢と希望を与えようと。
まず、私を含め3人が和歌山県に住民票を移した。挑戦の始まり。付加価値の創出、サービスの質低下、経済規模縮小につながるコストカットはしない。空港業務だけでなく、地域活性化を目指して、地域に人を呼び込むための仕組みを作る、人が人を呼ぶ仕組みを作ることを目指した。北海道ニセコを参考に。スキーに来たオーストラリア人がさらにオーストラリアを呼び、今では和風の旅館を経営するまでに。
紀南全体として、大きなキャンパスとして物事を考える。新たな顧客層の呼び込みにも着手。首都圏、東北、欧米豪露、ビジネスパーソン。オフピークの底上げ。閑散期に需要を伸ばすことで、正社員を増やすような雇用体系の変化、サービスの質の向上を目指した。
とはいえ2000m。現行の羽田線を最大限に活用した作戦を。当時の菅官房長官がワーケーションの旗振りをしてくれたことも追い風に。リゾートテレワークの先進地和歌山が始まった。
ただワーケーションを進めただけではない。ワーケーションの定量的効果の計測も行なった。結果、来てくれた人の仕事効率が上がることが分かった。ワーケーションのさらに発展形として、副業人材の呼び込みも。地域の企業にもメリットがあるし、関係人口ができる、地域のファンができる。若い人が来る。好循環が生まれ始めた。白浜まるごと顔認証。空港からホテル、店舗、各所で顔認証システムを導入。手ぶら、キャッシュレスで旅行が楽しめるように。リゾート白浜を、IoTの白浜に。こうした町全体での顔認証の取り組みをしているのは世界で白浜だけ。
弱小空港が「IoT」先進空港に
スマホを活用した滑走路の点検、ドローン、ドラレコ、人工衛星の活用など。空港でドローンは相性が良くないのが一般的だけど、うちは飛行機があんまり飛んでないから飛ばしちゃう。弱みを強みにする。日本は100点のシステムを作ろうとする。我々は80点くらいを目指す。その方がコストも削れるし、スピードも上がる。継続すれば安全性も向上する。白浜で開発したテクノロジーを他の空港に売るというビジネスも展開できるようになった。今では空港を飛び出し、道路の点検などにも参入。
カツオ。高知ともご縁のあるカツオ。最近は「空飛ぶカツオ」。釣り上げたカツオがドローンで飛んでくる。飲食店で受け取って捌いて食べる。もちろんモチモチして美味しい。町長いわく、「うーん。ITの味がする」。このコメントがバズった笑。
同じ技術を防災にも活用している。防災食を被災地にドローンで届けている。テクノロジー活用の反面、人も大事。エアポートGメンを結成。地元のシニア職員で結成。滑走路点検、鳥獣対策。お年寄りが空の安全を守っている。Gメンという相性が人気に。
空港職員みんながおもてなしの心を〜地域に根ざした取り組みを〜
空港はお客さまが初めて地域に触れる場所。この意識を職員に持ってもらう。職員同士の縦割りの考え方を取り払い、一体感を醸成する。クラシックコンサートを格納庫で開催。地域の人を無料でご招待。大学と組んで人材の育成も。ジャズナイト、高校生の部活の練習などなど。最近では、毎月地域を束ねるオンライン会議を開催。
空港を「どこでもドア」に
空港に来ればどこにでもアクセスできる。タクシー、自転車も使えるような取り組みを開始。都会のレンタサイクルを連れてきてシステムを導入。空港からバスに乗れる、バスターミナルとしての空港にもなっている。今では県内外の1日30便が往来。小型EV(電気自動車)の配備も。相乗りタクシーもやっている。
シームレスな移動を目指して。空港、バス、鉄道が手を組んで連携。お金持ちようにリムジンの横付けサービスも。
これからは、「地域活性化」を自立的、持続的に。地域活性化は仕組みがないと始まらない。行政も頑張っている。その上に民間の空港が地域のプラットフォームとして成り立っている。「関西の奥座敷から、日本の白浜、世界のKii」へ。
この記事を書いた「こうち仁淀ブルー熱中塾」メンバー
高知大学大学院生
釣り好き新人サウナー
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