移動スーパーとくし丸創業者
住友 達也 先生
1957年徳島県阿波市土成町で生まれる。1980年にアメリカに渡り、翌年帰国。
23歳で徳島のタウン誌「あわわ」を創刊。2012年に「移動スーパー とくし丸」を設立。
はじめに
23歳から徳島のタウン誌を発行していました。アメリカから帰ってきて、経験も人脈もお金もなく、あるのは“若さ”だけでした。家賃月6,000円の4畳半一間を事務所兼住まいにしていました。
ギターの弾き語りアルバイトで稼ぎ、食いつなぐ生活をして3年目。ようやくアルバイト生活から抜け出し、最終的には50人ほどの社員を雇うほどになりました。ただ、雑誌を作りたくて仕事を始めましたが、売上等の経営に気を使うのに嫌気がさし、絶頂期に辞めました。
それらの経験から言えることは、楽をしていると楽しいことも楽しくないということです。楽しく仕事や活動をするのは結構ですが、それだけではだめです。時には摩擦やリスクがあり、はじめて大きくて大切な果実を得ることができます。ぜひその土壌に、熱中塾がなって欲しいと思います。
“とくし丸”のきっかけと現在
その後7.8年徳島で遊び、組織というのには疲れるため、会社をするつもりはありませんでした。しかしそんなときに「買い物難民」問題に気が付きました。当時、この大きな問題には誰も手を出していませんでした。
この先確実に需要があり、市場も伸びる。これはすごくおもしろいなと思いました。事業としてもおもしろいし、社会の役にも立てる。小さな組織でも回していけるのではないかということで「移動スーパー とくし丸」を始めました。
現在、買い物難民は825万人いるとされています。原因は、スーパーの超大型化+野外化による地元店の衰退、高齢者の単身世帯化、公共交通の経営合理化、免許証の返納などが考えられます。
現状の対策としては、ネットスーパーやお弁当の宅配、生協などの宅配、コミュニティバス、家族の送迎があります。しかし、そこにはインターネットができないことや、同じメニューに飽きてしまう、食品を手に取って選べない、気を遣うなどの課題点があります。そんな中で始めたのが「移動スーパー とくし丸」。
今や契約者143社 1,050台と全国に広がっています。主に①命を守る(買い物難民の支援、見守り役)②食を守る(地域スーパーとしての役割を果たす)③職を守る(社会貢献型の仕事創出)の3点を事業目的としています。
とくし丸は、究極のセレクトショップです。軽トラックの荷台には、約400品目1,200~1,500点スタッフがおすすめしたい商品をのせています。
移動スーパーという“インフラ”であり“メディア”
とくし丸は、おばあちゃんのコンシェルでもあります。食品販売のため、週に2回、3日に1度と直接顔を合わせて会話をします。そのため販売スタッフは、住民の皆さんと近すぎず、遠すぎない心地よい関係になります。
そんな信頼関係のできた皆さんの要望に何でも応えるコンシェルを目指しています。
また、そんな関係にあるからこそ高齢者のマーケティングリサーチができます。直接対面し、話をし、ナマの声を集めることができます。例えば、森永乳業ヨーグルトバルテノのサンプル調査では、5,000件近い手書きのアンケートを集めることができました。
おばあちゃんたちにとっても、試供品をもらえるので喜びます。つまり、とくし丸が1,000台走っていて、1台当たり150~200人お客さまが付いているので、3日あれば15万人~20万人のお客さまに顔を合わせて、お話ができるネットワークがあるということです。そのようなところから、とくし丸は、移動スーパーという「インフラ」であり「メディア」となると考えられます。
売りすぎない、捨てさせない
とくし丸の販売事業は、n対n(複数対複数)の関係、商売です。なので、普通は来ていただいたお客さまには、1品でも多く買っていただきたいという売り方をすると思いますが、我々は「売りすぎない、捨てさせない」を大切にしています。
訪問販売なので、どのおばあちゃんが何を買っているのかわかっています。そのため、3日前に豆腐を1丁買ったのに、またもう1丁買おうとしたときに「お豆腐残っていない?」と聞くんですよね。そしたら「残ってたわ」と。「それやったら今日はお豆腐買うのやめようね」と“売り止め”をします。
売り上げももちろん大切ですが、消費期限を切らせて捨ててしまうことはさせないようにしています。それが、今後への更なる信頼関係を生みますし、結果として周辺商品の売り上げアップにも繋がります。
関係も長くなると、おばあちゃん家の冷蔵庫の中を把握している状態になります。それは、とくし丸が販売だけではなく、「見守り役」としての役割も果たしているということです。
今後
今後とくし丸の需要は、確実に10年~15年間高まり市場が拡大すると思います。とくし丸の需要は、決して中山間地域だけではなく、東京のような都市部にもあります。
人が住んでいるところには必ず需要があります。まだまだ供給量が足りていないところではありますが。そこで、今の注文受付はアナログベースで行っていますが、今後のデジタル社会の対応に向けてアプリを開発しております。
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この記事を書いた「こうち仁淀ブルー熱中塾」メンバー
高知大学地域協働学部の学生です!
出身は愛媛県松山市で、日々高知県の魅力に触れております!
将来は熱中塾で学んだことなどを活かして、まちづくりをしていきたいです!
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